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文化系クルマ好きの教科書『NAVI』【新保信長】新連載「体験的雑誌クロニクル」6冊目

新保信長「体験的雑誌クロニクル」5冊目

 

 1995年から97年にかけてPENTHOUS JAPAN(ぶんか社)で新車紹介ページを担当したが、そこにも『NAVI』の影響が露骨に出ている。写真のテイストも似ていたし、〈速けりゃいいってものかもしれない。〉(スカイラインGTR)、〈「これでいいや」と思える幸せ。〉(オペル・ヴィータ)、〈カッコイイとは、こういうことか。〉(三菱エクリプス)、〈インテリの自己主張。〉(ホンダ・プレリュード)、〈殿様のスポーツ〉(メルセデスベンツSLK230)といった見出しの立て方は、完全にパクリと言っていい。

 

左・『PENTHOUS JAPAN』(ぶんか社)1997年6月号p145、右・同1995年10月号p146より。当時はマンガ以外のネタも「南信長」名義で書いていた

 

 1台のクルマに3人の自動車評論家からコメントをもらって一本の原稿にまとめるという、なかなか手間のかかることをやっていたのだが、そのコメンテーターの常連が前出の下野康史氏であった。『NAVI』で下野氏の文章はずっと読んでいて、柔軟な視点と軽妙な筆致が好きだったので、クルマページをやることになったとき、真っ先にコンタクトを取った。同じく『NAVI』出身の小沢コージ氏にも何度かコメントをもらった。当時はあまり意識していなかったが、要するに『NAVI』っぽい感じにしたかったのだろう。

 冒頭で紹介した『クラクション』の表紙には〈Honk the Klaxon! to the times.〉というキャッチフレーズ添えられている。日本語にすれば「時代に警笛を鳴らせ!」。鈴木正文氏の発案らしいが、それはまさしく『NAVI』が実践してきたことだ。巻末の編集長からのあいさつには〈NAVIを愛するたくさんの人の想いから始まった、このクラクションを鳴らし続けていかなければ、という、ちょっとした義務感のようなものも生まれた〉と記されている。願わくば、新時代の『NAVI』として2号目以降も継続刊行されますように。

 

文:新保信長 

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新保信長

しんぼ のぶなが

流しの編集者&ライター

1964年大阪生まれ。東京大学文学部心理学科卒。流しの編集者&ライター。単行本やムックの編集・執筆を手がける。「南信長」名義でマンガ解説も。著書に『国歌斉唱♪――「君が代」と世界の国歌はどう違う?』『虎バカ本の世界』『字が汚い!』『声が通らない!』ほか。南信長名義では『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。新刊『漫画家の自画像』(左右社)が絶賛発売中です!

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